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今回の突撃レポートでは、9月に開校を迎える、筑波大学 辻村 真貴 氏(生命環境系教授 大学執行役員(海外教育拠点担当))にお話を伺いました。


1.自己紹介と貴学のご紹介をお願いします。

水循環や水資源学を専門とし、現在は、2024年9月の筑波大学マレーシア校、設置に向けて、設置準備業務に従事しております、辻村 真貴 と申します。

今回、マレーシア校を設置する筑波大学は、日本の指定国立大学であり、研究大学として幅広い分野の教育を提供しています。昨年開学50周年、創基151年を迎え、我が国最古の高等教育機関の一つとして誕生した「師範学校」から続く、長い伝統と実績を受け継ぎつつ、新構想大学として誕生しました。

「学際性」、そして、 嘉納治五郎先生の言葉である「自他共栄」に象徴される「国際性」は、現在も建学の理念として受け継がれており、“ノーベル賞受賞者”と“オリンピック・パラリンリックのメダリスト“を輩出している大学です。

【写真上:筑波大学マレーシア校が入るマラヤ大学の建物】

今回マレーシア校の設立については、上記建学の理念から、海外に分校を出すのも自然の流れであるとも考えています。筑波大学マレーシア校は、マラヤ大学の建物を賃借し、一学年40名の収容定員、学際サイエンス・デザイン専門学群として2024年9月に開学の運びとなります。

2.貴学ならではの特色やカリキュラム、また、講師陣にどのような方がいらっしゃるのかについてご教示ください。

課題解決型学修を中心とした教育課程を構築し、地球規模課題の解決に資する人材育成を目指しています。そのため、データサイエンスを軸として、自然科学のみならず、人文・社会科学、日本語・日本文化、体育など幅広く学修するプログラムを準備しています。授業は、日本語と英語を併用して行います。卒業研究を行う段階で、学生と指導教員が、研究課題について日本語と英語を大凡半分ずつ程度使い議論できるようになることを目指します。また、課題解決型学修授業では、インターンシップの活動も視野に入れ、在学中に社会のニーズも学ぶ予定です。

卒業時には、筑波大学として学位(Bachelor of Arts and Science:学士(学術))を授与します。卒業後は、日本及び世界で活躍できる人材を育成することを目指しています。

近年、日本人の若年層の減少と共に、日本へ留学する学生も減少している背景を踏まえ、日本の大学の代表としてこの筑波大学マレーシア校が、日本の高等教育の将来を牽引するという意気込みで、ミッションを成功させたいと思っています。

講師陣は、筑波大学本校から14名の専任教員が赴任予定です。スポーツ科学、データサイエンス、材料科学、物質科学、社会教育、医療医学、比較文学、社会科学、生命環境など、幅広い専門分野の教員から学ぶことが出来ます。


3.2019年にJACTIM広報委員会にて一度インタビューを実施させていただいており、私共としても貴学の開校を心待ちにしておりましたが、新型コロナウイルスの世界的流行の影響により、その後の開校までのご準備等にも大変なご苦労があったことと存じますが、大変であったこと、また、どのように問題解決に取り組まれたか?などお答えできる範囲でご教示ください。

マレーシアの法律では、マレーシア国内で海外分校を設置する場合は現地法人を設立しなければならないと定められています。しかし、現地法人をたてると、筑波大学としての学位を授与することができなくなります。これは大きな問題でした。

大使館の方々を始め、様々な関係各位にご尽力、ご支援頂いたお陰で、最終的には、本学マレーシア校を筑波大学本体の支店として登録することを、マレーシア政府が例外的に認めてくれました。コロナ過で、筑波大学から直接対応できなかったため、現地で支えてくださった方々に大変感謝しています。

また、コロナ禍ではマラヤ大学との交渉にも多くの苦労が伴いました。マラヤ大学の建物内に分校を設置することの大枠は決まっていましたが、マラヤ大学との関係性が深くなっていない状態において、打ち合わせもオンラインでやらざるを得なく、細かい調整に時間がかかりました。

2021年の12月頃からやっと現地で対応できるようになりましたが、その後も、建物の消防法上の問題が出てきたりと、様々なトラブルに直面しましたが、本年9月にようやく開校が叶います。

4.マレーシアでの今後の展望についてご教示ください。

開校してからが本番です。高等教育機関として、10年20年かけて、現地に認知され、その地に根ざし、しっかりとステータスを作っていきます。もちろん、マレーシアにおける日本人コミュニティの一員としても貢献していきたいと思っていますし、さらには、近い将来、他の大学が筑波大学に続けて海外分校を作っていく契機に繋がれば幸いと思っています。そして、10年20年後には日本の大学の海外分校が増えていき、海外分校がスタンダードになっていくことを願っています。

マレーシア校も当初は1学年の収容定員40名で開始しますが、徐々に志願者が増え、やがてはスペースが手狭になり、より広いキャンパスを必要とするようになれば良いなと考えています。

5.最後に、読者の皆様へメッセージがありましたらお願いします。

JACTIM関連企業の皆様にはずっと応援して頂いており、大変感謝しております。JACTIM Foundationから支援頂くとともに、インターンシップの引き受け、授業への講師派遣等、を引き受けていただいたり、JACTIM文庫を作る等のご支援を頂きました多大なご支援を頂いています。

我々としては、様々な分野で社会に貢献でき、企業にも大学院や研究機関にも真に必要とされるる人材を育成し、関連企業の皆様に御返しするのが使命だと感じています。

日本・マレーシア両政府での設置認可に係る調印式(2023年3月)。辻村教授(写真右)

以上