竹内 賢 様
(ペトロケミカルズ マレーシア)
2024年度のジョホール地域部会長を担当させていただいております、ペトロケミカルズマレーシアの竹内です。弊社は、樹脂原料を製造・販売するメーカーです。ジョホールバルのパシルグダン地区を拠点に出光興産の関係会社3社(出光ケミカルズマレーシア、出光スチレンマレーシア、出光アドバンストマテリアルズマレーシア)とともに、原料から製品までの一貫生産体制を構築し、各社が連携しながら事業を行っています。
私は、2021年10月に当時53歳で初の単身赴任および海外勤務を経験する機会を得て、ジョホールに赴任しました。以降、マレーシアの素晴らしい環境で公私ともに充実した生活を送らせていただいております。また、2024年度のJACTIMジョホール地域部会長を担当させていただいて以降、JACTIMの各種活動を通じてより多くの皆様との出会いがあり、たいへん感謝しています。
2025年1月現在、ジョホール地域部会には43社が登録されています。部会を三カ月に一度程度実施し、講師によるセミナーやJACTIM事務局からの報告により、情報や新たなソリューションへのヒントの提供、議論などを行っています。コロナ禍が落ち着いた現在は、なるべくFace to Faceの機会(会合後の懇親会も含む)を増やし、会員同士の連携強化を意識した活動を推進してきました。
2024年度は、以下の分科会活動を行いました。講演テーマの選定にあたっては、部会各社からのアンケートやその時点のトピックスを基に選定し、講師を依頼しました。
◆2024/5/3 第一回部会(対面)
ジョホールバルの日系企業有志が参加している「二金会」様にお声がけし、日系企業同士の連携強化を目的とした交流会を行いました。合計50名弱の方に参加いただき、参加各社の会社概要と自己紹介でほぼ時間が終了しましたが、その後の懇親会も含め、たいへん活気のある会合となりました。
◆2024/8/2 第二回部会(オンライン)
講演①:e-インボイス対応について(デロイト 渡様)
講演②:日系企業の人財確保について(パーソルマレーシア 杉谷様)
◆2024/11/22 第三回部会(対面)
講演①:e-インボイス対応について(AGSコンサルティング 八鍬様)
講演②:駐在員の健康管理やマレーシアの医療事情(ことびあクリニック 石川様)
◆2025/2/7 第四回部会(対面)
講演①:ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)について(デロイト 渡様)
講演②:多国籍の外国人ワーカーの作業品質を大きく向上させる秘訣とは(スタディスト 南様)
各部会では、講演に対する質疑応答、対面開催の場合は講演終了後の懇親会を通じて、活発な議論と交流を行うことができました。
ジョホールでは「イスカンダル計画」と呼ばれる大規模な開発計画がありましたが、コロナ禍の影響を受け、日本の新聞等でも「ゴーストタウン」と揶揄される状況が続いていました。しかし、シンガポールと近接していることもあり、2024年初にはマレーシア・シンガポール両政府間で「ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)」の共同開発に関する覚書が締結されました。
ジョホール地区はまさにこの特区構想の対象地域の中心にあり、JS-SEZがジョホール部会企業を含む “既存の企業にどのような影響を与えるか”、にも関心が集まっています。2024年12月にはJS-SEZの概要が発表されましたが、新たにジョホールに進出する企業を優遇する政策が主であり、既存企業に対しては、人財獲得競争の激化や人件費の高騰、各種コストの上昇など、マイナス面の影響が懸念されています。
JS-SEZによる住宅需要の増大を見越したと思われるコンドミニアム賃料の大幅上昇などの影響は既に出始めており、シンガポールとジョホール間を結ぶ通勤鉄道「RTS」が開通すると(2026年末予定)、さらなる人の流れが活発になることが予想されます。
シンガポールとジョホール間の給与水準の差は大きく、現在でもジョホールから多くの労働者がシンガポール企業に通勤しています。RTSの開通により越境通勤がさらに容易になると、より良い労働条件を求めるジョホールの労働者が増えることが予想され、既存企業はJS-SEZ進出企業やシンガポール企業との間で人財獲得競争を行わなければなりません。
給与面でシンガポール企業に対抗することは現時点では難しいと言わざるを得ず、給与や福利厚生だけでなく、いかに従業員エンゲージメントを高めていくかが人財確保にとって重要になると考えています。個社としても、またジョホール部会としても、この課題に取り組んでいく必要があると感じています。
私の部会長としての任期は間もなく終了しますが、今後ともJACTIMの皆様と連携し、上記の課題も含め、様々な課題を検討・議論していければと考えています。
以上