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ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)は7月17日、ASEAN事務局(本部:インドネシア・ジャカルタ)において、カオ・キムホンASEAN事務総長と対話を実施した。議長であるマレーシア日本人商工会議所(JACTIM)のほか、ASEANの9会議所の代表者が集い、将来のASEANのサステナビリティや人材育成に向けた日系企業の貢献や、ASEANがさらに魅力あふれる事業展開先となるような制度・ルール面での改善などを提案した。

対話には、日本貿易振興機構(ジェトロ)の片岡進副理事長のほか、来賓としてASEAN日本政府代表部の紀谷昌彦大使、経済産業省の羽田由美子アジア大洋州課長、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の渡辺哲也事務総長が出席した。

世界経済の分断や気候変動の影響といったリスクが高まる中、地域統合の中心的な存在であるASEANは益々重要になりつつある。米国、中国、EUをはじめ、あらゆる国・地域がASEANとの関係強化に取り組むなか、日本は製造業を中心とした強固なサプライチェーンを有しており、共通の課題に取り組むため、対話や議論を通じてASEANに積極的に関与しています。今回、FJCCIAはカオ・キムホンASEAN事務総長との対話を実施し、ASEANにおける日系企業の地域経済・雇用への貢献や、技術革新・産業高度化のパートナーとしての存在感をアピールしました。

澤村剛朗FJCCIA議長(マレーシア日本人商工会議所会頭)からは対話の中で、ASEAN全体として、ASEAN加盟各国が、自国だけではなく、地域全体として競争力を高めて欲しいと期待を示しつつ、「各国がお互いに補完することで、さらに競争力あるASEANへと『トランスフォーメーション』を遂げ、企業にとってベストな投資先になって欲しい」と強調した。

また、JACTIM会頭としては、以下の通り要望した。

・特定原産地証明書の受発給に係る電子化

改善への進展、成果が一定程度みれる一方で、電子データ交換はまだ道半ばであり、改ざんや偽物が作成しにくい方式を導入し、速やかにASEAN域内全て、さらにはFTA締結先との間で利用が進むことを期待する。

・GX

コジェネレーション運転等によりCO2削減に貢献しても、ガス価格が高いためメリットが出ない事例がある。ASEAN各国において、CNに向けた企業活動への支援をさらに進めていただきたい。

・第3国によるアンチダンピングの影響

インドが主に中国を対象としたAD対策を実施したことにおり、ASEANからの輸出品にもAD措置が講じられる例があり、ASEANの競争力を著しく低下させているという問題がある。こうした保護主義的な動きに対し、市場開放性を確保するASEANのイニシアチブを期待する。

・不公正貿易

一部の消費財において不正な物品がASEAN市場内で流通し、正規品が駆逐されるリスクが顕在化している。消費者の安全が脅かされ、各国の徴税機会も逸している。憂慮すべき問題として対策を講じていく必要がある。対応措置を検討いただき、その際にはぜひ関係企業の意見聴取も行っていただきたい。

カオ総長からは、FJCCIAの提言を踏まえ、以下のような回答があった。

・「ASEANデジタル経済フレームワーク協定(DEFA)」は来年には妥結する見込みであり、日系企業も含め、ASEANに立地するすべての企業に恩恵をもたらす。デジタルペイメント、ビッグデータ、サイバーセキュリティ、デジタルスキルなどの内容が含まれる。日系企業からの意見やノウハウの共有を歓迎する。

・脱炭素型社会の実現に向けて、「ASEANカーボンニュートラル戦略」の枠組みにより、地域でのグリーン経済の連結性を高め、エネルギー利活用の多様性を広める狙いがある。まだASEANの人口が増大するなかで、エネルギー需要も増加が見込まれるため、エネルギーミックスも含めて、ASEANがどのような道をとるべきか、日本企業に経験や技術を共有していただきたい。

・AIが仕事を奪う懸念があるなか、研修やアップスキリングには、取り組み続ける必要がある。再教育により、労働力不足の問題にも対応できるようになる。また、日本企業は独自の技術訓練学校を設立し、歓迎されている。キャパシティを高める研修の取り組みは、各国のローカル人材育成上のカギとなっている。

・不正貿易については、世界のあらゆる地域でみられる問題だが、日本とASEANで共に協力し、ルールベースの開放的な貿易に共に取り組むことが可能である。日ASEANで醸成した「信頼」に基づいた良好な関係性により、協力を深めることができる。

本対話の運営を支援する機関として、ジェトロの片岡副理事長からは、FJCCIAの要望項目の実現に向け、日ASEANにおけるオープンイノベーションや脱炭素化に資するASEANでの事業などの紹介がありました。

・日 時:2024年7月17日(水) 14時00分~16時00分

・場 所:ASEAN事務局 国際会議場                

・主な出席者:

  (ASEAN事務局からの出席者)

   カオ・キムホン ASEAN事務総長

   ASEAN事務局職員(幹部支援課、市場統合局企業・利害関係者関与課、対外経済関係課)

  (日本側からの主な出席者)

   澤村 剛朗  FJCCIA議長(マレーシア日本人商工会議所 会頭)

   高野 光一  FJCCIA議長国JETRO代表(JETROクアラルンプール事務所 所長)

   樵田 侑樹  FJCCIA議長国事務局長(マレーシア日本人商工会議所 事務局長)

   藤  浩蔵  FJCCIA幹事(バンコク日本人商工会議所 会頭)

   黒田淳一郎  FJCCIA議長顧問(JETRO バンコク事務所長)

   石井 信行  FJCCIA事務局(バンコク日本人商工会議所 専務理事)

   紀谷 昌彦  ASEAN日本政府代表部 特命全権大使

   片岡 進   JETRO 副理事長

   渡辺 哲也  東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)事務総長

   羽田 由美子 経済産業省通商政策局アジア大洋州課長

   各FJCCA加盟商工会議所 会頭・事務局長  ほか

以上