大好評だった前編に続き、記事後編を公開いたします!直近でアメリカにいらっしゃったインタビュアーの齋數さんですが、後編は、米国が実際に行っている取り組みのお話などを交えながら、マレーシア、ASEANにとどまらないグローバルな観点でお話をお伺いすることが出来ました。後編も是非お楽しみください!
編集委員
山本 有理(全日本空輸株式会社)
齋數 一平(三井住友海上火災保険マレーシア)
私(齋數)は直近でカリフォルニアに滞在しており、現地では森林火災が大きな問題となっていました。その対策として、IoTデバイスを木々に設置してトレーサビリティを確保し、火災が発生した際には早急に検知して対処する取り組みが行われていました。ご説明された事例にも、こうした技術が活かせるのではないかと感じました。また、衛星画像の活用や、ブロックチェーンによる情報の記録なども、日本企業が提供できる付加価値の一例だと考えています。
ユーザベースも2013年頃から海外進出を開始し、10年以上が経過しました。現在、私たちの東南アジア事業においては、日系企業に加え、現地企業のお客さまがいらっしゃいます。日系企業の場合、スピーダを既に知っている方も多く、ビジネスの展開はスムーズであったと聞いています。しかし、現地の企業や海外の方々との取引を広げていく点は、ASEAN展開の中で最も苦労した部分でした。
特に、マレーシアでの挑戦では、現地で我々が無名の存在であったことが大きな課題でした。ブランド認知がないため、サービスを試していただくこと自体のハードルが高く、スピーダに対する信頼をいかに築くかが大きな挑戦でした。そこで、当時、起業家精神を持ったマレーシア人メンバーの協力を得て、彼のネットワークも活かし、現地での認知度を少しずつ高めていきました。
大きなターニングポイントとなったのは、マレーシアの政府系機関や企業にサービスを導入していただけたことです。たとえば、IRB(マレーシア内国歳入庁)、プルモダランナショナル(ブミプトラ系投資信託)、エクイナス(政府系プライベートエクイティファンド)などにご利用いただけたことで、現地での信頼が高まりました。政府系機関の支持を得られたことは、他の現地のお客さまとの信頼構築にも大きく貢献し、ブランドとしての信頼性が格段に増したのです。
もちろん、最初から厳密かつ詳細な戦略があったわけではなく、試行錯誤しながら進めてきた部分も多かったと聞いています。ただ、政府系の企業やプロフェッショナルファームに評価をいただけたことが、結果的にブランド価値を高め、現地の方々の信頼を得る大きな助けになったと感じています。結果として、現在では多くのマレーシア企業の皆さまにもスピーダをご利用いただけるようになっています。
先ほどお話をしたマレーシア人の彼も、もともと政府関係者であったり、企業の高位職にあったりしたというわけではありませんが、起業家精神が強く、我々と同じ目線を持っていました。その姿勢が、政府との関係構築にも役立ったのだと思います。単に人脈だけに頼るのではなく、戦略的かつ積極的に働きかけることが重要なのだと思います。なお、マレーシアでの経験を基盤に、今はベトナム市場でも同様の手法を試みながら進出を進めているところです。
我々のチームでは、色々なメンバーがいるなかで、各メンバーが自らアイディアを出し、積極的に提案して行動に移す文化を重視しています。単に他人の意見をなぞるのではなく、自発的にオーナーシップを持って進めることが求められます。こうした自己発信型の姿勢が、重要な「起業家精神」の一つと考えています。
アイディアを実行に移すチャレンジがしやすい職場環境ですし、提案して終わりではなく、最後までやり遂げる責任感や実行力が重視され、「自ら考え、責任をもって最後までやりきる」スタンスを共有することで、メンバー全員が主体的に取り組む姿勢が醸成されています。
その2つのバランスが重要なのではないかと思います。確かに、パッションを持っているメンバーは多いと感じますが、同時に我々は多くのデータを活用し、ファクトの裏付けも行っています。感覚的に「ここが伸びる」と感じたとしても、それだけではなく、一定のデータや裏付けを用いて、実際の可能性を確認するプロセスを踏むようにしています。
すべてを理詰めで進めるとスピードが失われますし、情熱だけでは正確さに欠けます。そのため、この2つの側面をうまく補完し合うチームが理想です。我々のチームは国籍も多様で、異なるバックグラウンドを持つメンバーが在籍しています。その多様性の中で互いを尊重し合い、さまざまな視点を活かしながら一体感を持って進むことが、当社の強みになっていると感じています。
御社のように多国籍で多様性を尊重しながら事業を進めていく姿勢は、理想的な海外展開の形だと理解いたしました。
私たちは情報を扱う上で、特定のソースに依存せず、多くの異なる視点を取り入れながら精査することを重視しています。そもそも、政治や経済についての発信は、観点や立場によって見解が異なることが多く、特に意図的なフェイクニュースではなかったとしても、偏りが含まれているケースがよくあります。例えば、マレーシアの政治ニュースであっても、どういう立場の人が情報を発信しているかによって、そのニュースの解釈は変わってきます。オープンソースの情報をいくつか比較することで、多面的に捉える努力は常にしています。
東南アジアについても、域外の日本やアメリカ含め、世界中で多様な情報が発信されています。これらを比較検討し、目的に沿って必要な判断をすることが重要です。立場や観点が違えば、情報が異ってくるのは当然でもあるのです。なお、定量の企業財務データなどについては、信頼出来るパートナーから入手しており、安心してご利用いただけます。
私たちが提供する情報に関しては、過度な価値判断を行わないように気をつけています。幅広く素材を提供させていただいているプラットフォームですが、我々として、何かユニークな価値判断をしたり、特定のスタンスをとったりということはしておりません。
私たちの役割は、お客さまが解釈や意思決定を行うにあたって必要な素材を提供することにあります。たまに「マレーシアの市場は良いのか悪いのか」というような質問をいただくことがあるのですが、対象や目的によってその答えは大きく変わります。投資を例にとっても、タイミングや目的が異なれば、良し悪しの判断も正反対にすらなりうるのです。最終的には、お客さまが自分自身で判断できるよう、材料となる情報を適切に提供し、その土台をご提供することを心がけています。
我々のサービスは、オープンソースの情報をできる限り効率的に提供することを第一にしており、結果として、プラットフォーム上で何か特殊かつオリジナルな情報を提供することはしていません。基本的には多様な公開情報を集約し、アクセスしやすい形で提供しているということになります。
その上で、例えば新規事業の立ち上げにあたり、私たちのプラットフォームを使って仮説を立て、その仮説を検証する段階になると、さらに一歩進んだ情報が必要になったり、リーチが難しい情報にアクセスしたりする必要が出てきます。このニーズに対しては、現在、エキスパートネットワークを活用した「エキスパートネットワークサービス(FLASH Opinion)」というサービスを提供しています。
このサービスでは、私たちのネットワーク内の業界エキスパートや元業界関係者に直接インタビューを依頼することができます。エキスパートからの実務的な情報や市場動向など、オープンソースの情報に加えて、実際の業界経験に基づいた知見を効率的に得ることができます。インタビューは、私たちが代行することもできますし、直接お客さまとエキスパートをつなげてお手伝いすることも可能です。
また、コンサルティング的なアプローチで、仮説検証のためのアドバイスや、インタビューを実施する最適な方法についてディスカッションを行うサービスも提供しています。このように、オープンソースベースのプラットフォームを土台としつつ、リーチしにくい情報源へのエキスパートを通したアクセスや、情報の解釈を通してより深いインサイトを得るためのサービスも提供しています。
私たちユーザベースは、一企業として、皆さまと同じく、日々試行錯誤しながら東南アジア市場を開拓しています。私たちの東南アジア事業における目標は、日本企業の皆さまが直面する様々な課題を、情報という観点からサポートすることです。具体的には、意思決定の支援、新規事業の開発、営業販路の拡大など、皆さまがよりスムーズに事業を進められるよう、プラットフォーム上の情報や業界レポートを日々充実させています。
サービスをより充実させるためには、皆さまからのフィードバックや意見交換が欠かせません。もちろん、スピーダのサービスをご利用いただけると嬉しいですが、それだけでなく、マレーシアの市場に対する見方や、他国と比較した際のメリット、ローカル企業の考え方についても意見交換をさせていただけると、私たちにとっても有益ですし、皆さまにとっても新たな洞察を得るきっかけになるのではないかと思います。
ぜひ一度、スピーダがどのようなものかお試しいただき、その上で意見交換をさせていただければと思います。私たちが提供できる情報とサポートが、皆さまのビジネスにとって価値あるものとなることを願っております。
また、東南アジアを拠点とする日系企業の皆さまに向けたコミュニティ運営としてトレンドのセミナーを定期的に開催しており、その他にもASEANレポートやインタビュー記事などのコラムも掲載しております。ぜひ一度ウェブサイトもご覧ください。https://sea.ub-speeda.com/ja/
スピーダのサービスは、口頭で伝えるのが難しい部分もありますので、無料でトライアルを提供させていただいております。実際にお使いいただくことで、その使いやすさや仕様について理解を深めていただけるかと思います。ぜひ、無料トライアルをお試しいただければと思います。
また、スピーダの東南アジア版は日本版と異なっており、ユニークな特徴があります。具体的には、東南アジアビジネスに特化したライブラリーのページがあり、電気自動車や半導体などのホットトピックを東南アジアの視点で扱っています。このライブラリーは、実際に皆さまからいただいたニーズを反映し、内容も定期的にアップデートしています。
さらに、東南アジア版のサービスには、無料のオープンソースのリサーチ枠が含まれており、もしお客さまが求めるレポートがプラットフォーム上にない場合にも、そのリサーチ枠を使ってカスタマイズされたレポートをご用意することもできます。東南アジア版の特徴やサービスの利便性を、ぜひ一度体験していただければと思います。
以上